似てない、と思うのだが。

小夜は思考に耽りながら、食堂で昼食を食べていた。此処は天神学園、人外から変人まで幅広く在学する奇怪な高等学校である。外装は一般の校舎と差違無いが、その中には勇者や妖怪、狼男等多種多様だ。そう、だから、平凡である──と小夜は信じている──己は其れ等とキャラ被り、何ぞ有り得ないのだ。そう、有り得ない筈、なのに。


「おとぎじゃね」

「ああ、あれだろ。あの伝統的なタイマントーナメント一回戦を戦わずして敗退したっていう、あの」

「サイテー、だよな」



タイマントーナメント以来、彼女を見ては“おとぎ”という単語を吐く生徒が急増したのだ。確かに、タイマントーナメントで、おかっぱ髪が似てるな、と小夜は少しだけ思った。しかし、それだけだ。髪は彼女の方が長いし、瞳は闇色に近いし、何よりも、不思議な雰囲気を持っていた。