そんな学院の中でのん気に過ごしていたのに。

彼のせいで変わってしまった。




 それは、高等部の入学式だった。

私は初等部、中等部と持ち上がりで来たため、

特に周りも変わりなく、校舎だけが移るぐらいだった。

ふと周りを見ると、女子の人だかりが出来ていた。

その、人だかりに近付くと、中心には、1人の男の子がいた。

色素が薄いのか、髪と瞳が茶色くて、唇の形も良くて、キレイな顔立ちの

男の子だった。

彼に見とれていると、周りの子たちが私に気付いた。

「あ!皆さん!奏美さんがいらっしゃったわ!」

そして、私と彼との間に人がいなくなり、道ができた。

彼が私に気付いて、声を掛けてきた。

「君は?」

「あ・・・私は、桜ノ宮 奏美といいます。よろしく。」

こんなに、名前を言う時に緊張したのは初めてだった。

すると、その男の子も名乗ってきた。

「俺は、野々宮 祐也。こちらこそよろしく。」