大切なもの





「大学の先輩に迫られてるんだって」


「……は?」



その言葉に、あの日を思い出して綾香を見る。



「綾香。あの時の男か?」


「……うん……ごめんなさい」



諦めたように、俯いたまま綾香は気まずそうに謝る。



「何された? つーか告白されてたの断ったのか?」


「うん。あの後ちゃんと断ったんだけど…家にまで押し掛けてきたり、触ってきたり………。」



吐き出された言葉は弱々しくて。いつも元気で明るい綾香だから、余計に――イライラする。


懲りねぇのか、あの野郎は。


アザがつくくらい肩思いっきり掴んでやったのに。