大切なもの

 


「…すみませ…「お試しで良いんだ!まずは付き合ってみて考えて欲しい!」

「…えぇ!?」


告白されてこんなパターン、生まれて初めてだった。


「でも、あたし――「嫌になったらすぐ振ってくれて良いから」

「………」


そんな事、言われても――


「ずっと、気になってたんだ。少しだけで良いから時間をちょうだい」

「………」


「綾香ちゃん…」



あたしの名前を呼んで、近付いてくる先輩にあたしは抵抗出来なかった。…抵抗しなかった。


「これが答えだって、取っていい?」


その言葉にあたしは小さく頷くと、頭の中に空也の笑顔が浮かんでくる。

涙を堪えて下を向くと、先輩が強く抱き締めてきた。



これで2回目の、逃げ――。
あたしはいつまで立っても弱い人間なんだ。


――正人の時から、あたしは何一つ変わっちゃいない。