大切なもの

 


家に着く頃には、もう夜の11時を過ぎてたからさすがに空也はもう帰っただろうと少しホッとした気持ちになった。



「ちょっと、トイレ貸してくれないかな」

「――はい?」


あたしの玄関の前まで来て、そう言うもんだから断るにも断れなくて、空也も帰っただろうと思ってたから普通に家に上げた。


「…どうぞ」


そう言って――あたしが視線を下げた所には、空也の靴があったから驚愕した。

ヤバい!と思ってももう遅くて、先輩はトイレに向かっていく。


…気付かれませんように。

そう祈ってた。すると無事に先輩がトイレから戻ってきたから玄関で待ってたあたしは心底ホッとした。


「いやー、ありがとう」

「…いえ、どういたしまして」

――早く帰って欲しいのに。

あたしの前に立って何か言いたげにしてる目の前の先輩。


「どうかしました?」

「あぁ、…綾香ちゃん。俺さ」
「………」

「好きなんだ。付き合ってくれないかな」


少し頬を赤らめてそう言う先輩に、嬉しいなんて気持ちは微塵も湧いてこなかった。