こわれもの


「マキ……」

思い詰める元恋人を前に、ヒロトは何かしてあげられないものかと、考えを巡らせた。

しかし、どうしたらいいのか、全く分からない。

怒りににじんだマキの眉間は、弱々しくなる。

離婚したことの屈辱感や寂しさ以上に、我が子を自分の元で育てられなかったことに、母親として情けなさや罪悪感を覚えていたのだ。


「アリサ、まだ二歳にもなってないのに、私の手から離れて施設の先生に預けた時、ずっと泣いてた……!」

マキは言い、両手で顔をおおい、声を殺して泣き出した。

「あんなに小さいのに、アリサは私のこと母親だって、分かってるんだよね……」

マキのやせ細った指先の奥に、悲しみの涙が溢れている。

ヒロトは思わず、マキの肩を抱き寄せた。

「金が出来たら、アリサのこと迎えに行けばいいじゃん」

「……無理だよ」

マキは言った。

「私、あの子を育てていく自信ない。

仕事だって、まだ見つかってないもん……。

子供がいるって言うと、面接すら受けさせてもらえない」

「でも、またアリサと一緒に住みたいんだろ?

もっと、色んな求人見てみたら?」

「じゃあ、ヒロトも助けてくれる?」

「……それは……」