こわれもの


晴れない気分で仕事を終えると、同僚達に挨拶し、ヒロトは外に出た。

アスカの顔を見たいが、今日彼女はバイトに入っていないはず……。

毎週メールで、アスカのシフトを教えてもらっている。

アスカはいないと分かっていたが、ヒロトはアスカのバイト先で夜飯を買い、一人暮らしのアパートに帰宅した。

ヒロト宅は駅から近く、周囲に商店街もある。

職場から近いし、交通の便も良い、最高の物件だ。

クリーム色の外観をした4階建てアパート。

1階の角部屋がヒロトの借りている場所なのだが、今日に限って、まっすぐ扉に向かうのをためらった。

なぜなら、《105》と書かれた扉の前に、遠山マキの姿があったから……。


「……マキ!」

セミロングの髪を茶色く染め、動きやすそうな格好をしたマキ。

彼女は、ヒロトが帰宅したのに気付くと、

「住む場所、変えてなかったんだね」

と、毎日会っている友人のような口ぶりで、意味ありげに微笑んだ。

「……どうしたんだよ、こんなとこまでやってきて……」

ヒロトは彼女と目を合わせず、そう尋ねる。

「だって、この前のメールに、返事くれなかったじゃん。

私、色々悩んでたのに。

ヒロト、会わない間に冷たくなったね」

「…………とにかく、上がれば?」