こわれもの


ワケあって、高校に入学して以来、アスカは祖母の家で暮らしている。

祖父は亡くなっており、祖母とは二人暮らしなので、出来るだけ祖母には心配をかけたくないとアスカは考えていた。

ヒロトは、アスカの戸惑いなど素知らぬ顔で、

「じゃあな。頑張れよ」

と、アスカがレジを通した乳製品飲料片手に、店を後にした。

「ちょ、ヒロトさんっ」

ヒロトの強引さに面食らうアスカ。

“ヒロトさんのことは普通にいい人だと思うけど、こっちの予定くらいちゃんと聞いてくれてもいいのに”

バイト後すぐ家に帰るべきか、ヒロトの誘いに乗るべきか……。

休憩中、アスカは同じクラスの山口キョウ(やまぐち·きょう)に電話をし、相談した。

キョウは、高校に入ってからずっと一緒に行動している、アスカにとって気の合う女友達。

アスカが元カレと別れた時に親身になって励ましてくれたり、なぐさめてくれたのも彼女である。

バイトでもして気を紛らわせたら?と、アドバイスをくれたのもキョウだった。

キョウのおかげで、アスカは何とか毎日を過ごしている。

今回も、すがる想いでケータイを取り出し、彼女に電話をした。