こわれもの


《新着メール 1件

差出人:上原アスカ》

アスカからのメールには、昼休みの弁当がおいしかったことや、彼女のクラスメイトであるマツリのグチが書いてあった。

クスクス笑いながら、ヒロトはそれを読んでいく。

《仕事おつかれさま》

文末のそんな一言を読み、ヒロトは仕事の疲れが癒えるのを感じた。

アスカのことを好きになりかけていると、自覚はある。

けれどヒロトは、どうにも前に踏み込めないでいた。


人との関係を深めるのが苦手なヒロトにとって、アスカに想いを伝えるのは至難の業(わざ)だし、そのせいだけではない。

人生で初めて、心から好きになった遠山マキ。

マキに振られたという過去が、まだ、ヒロトの胸に残っていた。

マキと過ごした時間はどんどん薄れていくのに、あの頃抱いていた熱い感情は、いまだに消えていなかった。

そんなままアスカと付き合うのは、いけない。


ヒロトは、もう関わることのない元カノ·マキと、身近にいる魅力的なアスカ、二人の存在に揺れ、悩んでいた。