ファーストフード店を出ると、二人は隣県の港にある遊園地に向かうことにした。
「道ならだいたい分かるし、アスカの行きたいとこ言え」
ヒロトにそう言われ、アスカが提案した行き先だった。
昔、母が離婚する前、一度だけ“本当の家族”で行ったことのある場所。
アトラクション豊富で売店の商品内容も充実している、人気遊園地だ。
中学の頃、友達と計画していた卒業旅行でも、行き先として候補に上がった場所である。
しかし、アスカは卒業旅行でそこに行くのを賛成しなかった。
血のつながった父と作った、唯一の思い出がある遊園地。
いくら卒業旅行といえど、アスカは再びそこに行く勇気がなかった。
両親が離婚した理由は、アスカが高校2年になった今でも分からないまま。
母はそれを話したがらないし、アスカと同居している祖母も、それに関しては口を閉ざしてしまう。
離婚後、父に会えなくなったことから察するに、両親が別れた原因は父にあるのだろう。
アスカは漠然とそう思っていたが、それでも、自分にとって大好きだった父に違いない。
二度と会えないと分かっているから、たとえ卒業旅行といえど、父を想起させるような場所には行きたくないというのが、これまでのアスカの心情だった。


