こわれもの


マキの胸に、アスカの言葉ひとつひとつがしみてくる。

《母子家庭のつらさは、わかるつもりです。

子供がいるとか、旦那がいないというだけで、職場でも厄介者扱いされたり、「変な性格だから離婚したんじゃない?」って偏見を持たれたりすると、お母さんからグチを聞いたこともあります。

私の想像以上に、お母さんはつらい時期が多かったんだと思います。

マキさんのように、20代の女性が一人きりで二人の子供を育てるのは、大変ですよね。


私の言う事に、不愉快さを感じさせていたら本当にすみません。

でも、子供の立場から、マキさんに言っておきたいことがあります。

怒らず読んでください。》

マキはノドを鳴らし、手紙を最後まで読み切った。

《子供にとって、親はかけがえのない存在です。

小さい時なら、なおさらそうです。


子供は、親以外に頼れる人なんていません。


ヒロちゃんに聞きましたが、マキさんは、いま施設に住まわせている子を里子に出すかどうかで悩んでいるそうですね。

しょせん、バイトしかしたことのない私には、マキさんが抱えるお金の問題や就活の厳しさなんて理解できないのかもしれません。

でも、子供と離れて暮らすことは、よく考えて決めてください。

もしいま、マキさんが長年子供を手放したら、その子は、私みたいに不安定な感情を持つ子に育つかもしれません。

里子は養子とは違うので、マキさんの準備が整えば、いつかまた、子供と一緒に住めるようになるかもしれませんが、親と離れて暮らす時間は、子供にとっては永遠のように長く感じます。

私も、ヒロちゃんに出会うまでそうでした。

周りに心を開けず、いつも孤独感と隣り合わせで……。


周りに対しての感情表現も、他の子みたいに上手にできなくなりました。

一概(いちがい)には言えないかもしれませんが、私がそうなってしまったので、念のために書きました。

マキさんの子供に、私と同じような思いや育ち方をしてほしくありません。》