こわれもの


母の元を離れた時に感じた孤独と切なさ。

どうしようもない気持ち。

それらを記憶の隅に追いやるべく、アスカは作り笑いを浮かべ、

「私、睡眠時間短くても平気ですから、帰るの何時になっても大丈夫ですよ」

ヒロトは一瞬思い詰めた顔をしたが、すぐに普段の気さくな口調で、

「そっか! よかった。

好きなだけ食べろよ」

「はいっ! いただきますっ」

「あ、ついでに言っとくけど、敬語はヤメ!

なんか距離感じるし」

「でも、ヒロトさんはお客さんだし……」

ためらうアスカに、ヒロトは白い歯を見せてはにかんだ。

「もう、客なんかじゃない。

一緒にご飯食べるんだから、立派な友達。だろ?」

「は、はい……」


始めはギクシャクしていたが、ヒロトのリードがあり、半分ほど腹が満たされてきた頃、アスカはくだけた態度を取れるようになった。

ランチョンテクニックとは、このことか。

食事を取りながら話をすると、相手への警戒心が薄れ、仲良くなりやすいのだ。