店内は客入りが多く、他人の話し声が溢れていたので、目をつむっていたヒロトは、アスカが席を離れたことに気付けなかった。
次々とあふれ止まらない涙を両手で交互に拭いつつ、アスカはひたすら、夜道を駆け抜けた。
ここでヒロトに追いつかれてしまったら、あの手紙を残して店を去った意味がない。
最後は笑ってさよならすると決めたのだから、彼には泣き顔を見せるわけにはいかないのだ……!
“ヒロちゃんは優しいから、私がすがれば、きっと一生、私に付き合ってくれる。
ヒロちゃんは、そういう人だもん。
だから、私から別れてあげなきゃいけなかったんだ……!”
ヒロトを自由にするのはアスカの役目。
彼を幸せにしてあげられるのは、マキという女性、ただ一人だけなのだから……。
未練はありあまるほどあるが、アスカは今、不思議と後悔はしていなかった。
こうして良かったと、心から思える。
やるべきことは全てやったのだ。
“ヒロちゃん……。
私のこと、追いかけてきたらダメだからね……!”
アスカは全力疾走し、キョウとマツリが待っていてくれる駅前のファーストフード店目指して、駆けた。


