こわれもの


出来たてのカフェラテをひとくち飲むと、ヒロトは席を立ち、アスカの隣に行った。

「どうした?

体調悪いなら、送るけど……。

受験勉強、無理してるんじゃないの?」

「ううん、大丈夫……」

ヒロトのことで忘れかけそうになるが、アスカは今年受験生。

“勉強なんて、最近全然、手につかなかったんだよ……”

ヒロトはしぶしぶ自分の席に戻り、今度は向かい側からアスカの表情を覗き込んだ。

彼女の顔は、いつになく暗い。

「体調悪いわけじゃないなら、どうした?

今日、やけに静かじゃん……。

言いたいことあるなら、我慢するなよ?」

「…………ヒロちゃんはいつも、そうやって言ってくれるね」

アスカは言い、顔を上げた。

ヒロトと目を合わせ、悲しげに眉を下げる。

「私はいつも、ヒロちゃんに守られてばっかりだった。

ヒロちゃんは優しくて、どんなに疲れてても会ってくれたし、私を大事にしてくれた」

「アスカ……」

「でも、じゃあ、ヒロちゃんは?

ヒロちゃんは、私に我慢してることない?」

「あるわけないじゃん」

ヒロトは笑ってアスカの疑いを否定したが、それがウソであることを、アスカは悟っていた。