「ヒロちゃん、本気……?」
別れたくないと頼んだのはいいものの、アスカは、ヒロトの切り替えの早さに気後れしてしまった。
「私と付き合った後も、マキさんに未練があったんじゃないの?」
「あったけど……。
今は、アスカを幸せにしたいから」
柔らかい口調ではにかむヒロトに、アスカは安心と同時に、釈然としない思いを抱いた。
「ヒロちゃん……。
別れるの拒否ったクセにこんなこと言いづらいけど、マキさんの元に戻らなくていいの?」
それは、ヒロトの気持ちを気遣うというより、アスカ自身が揺るがない安心感を得たくてした質問だった。
「マキさん、一週間後にヒロちゃんを待ってるんだよね?
私と付き合うってことは、マキさんのその誘いを無視するってことだよ?」
「ああ。分かってる。
でも、もういいんだ。
俺は、アスカといる」
ヒロトは言い、アスカを抱きしめた。
一週間後のクリスマス。
恋人同士には欠かせないイベントのはずだが、二人の前では霞(かす)んで見える。
ヒロトを引きとめることが出来た安堵感は、極めて低い。
アスカの心には靄(もや)がかかっていた――。


