「……ああ、待ってて」
戸惑うようなヒロトの声に、アスカの緊張はピークに達したが、それを出さず、あえて明るい対応をしようと瞬間で決めた。
ドアを開けるなり、ヒロトは暗い表情でアスカを出迎える。
「ごめんな、今日、迎えに行けなくて……。
前から、今日の花火楽しみにしてたのに……」
「全然大丈夫!
それより、体調でも悪かったの?」
アスカは意識して明るく振る舞った。
いつまでこの姿勢をキープできるか分からないが、今は暗い雰囲気にだけはなっていけないと、無意識のうちに思ったのだ。
「体調悪いなら、何か作ってあげるよ」
リビングに荷物を置くなり、アスカはそう言ったが、ヒロトはそれに対し無言で首を振る。
アスカは、全身の血が逆流するような恐怖を覚えた。
今まで一年近くヒロトと付き合ってきたが、こんな風に暗い表情をした彼は見たことがない。


