こわれもの


ヒロトは後部席からブランケットを取り出し広げると、それをアスカの足にかけた。

「すいませんっ」

アスカはとっさに謝る。

昔はよく父や親戚の車に乗っていたが、こんな風に寒さを気にかけられたことはない。

それに、まだ客と店員の感覚が抜けないアスカは、客である彼にそんな気を遣わせるのが申し訳なく感じた。

「そんな、気ィ遣うなって。寒いだろ?」

ヒロトはアスカの制服姿を見て言った。

学校帰りに直でバイトに向かったので、いまも制服を着たままである。

車の中とはいえ、1月の夜。

明日の日付に変わるまで2時間を切った空気は、鳥肌が立つほど冷え込んでいた。

冬は、車内のエアコンがフル稼動するまで時間がかかる。

「ありがとうございます」

ブランケットを整え、アスカはヒロトの横顔を見つめる。

“やっぱり、優しいな。ヒロトさん。

色々迷ったけど、こうやって誘いを受けておいて良かったかも”