こわれもの


電話の向こうで涙するマキ。

『ヒロトは、もう、私のこと嫌いになった?

当然だよね……。

私から別れ話をしたんだから、今さらこんな風に助けを求めても、あきれられて当たり前だよ……。

でも、やっぱり、ヒロトとアスカちゃんに別れてほしいって思っちゃう……』

「マキ、落ち着けよ……」

マキに対してだけじゃなく、ヒロトは自分自身にもそう言い聞かせていた。

落ち着けないのは、むしろヒロトの方である。

アスカと過ごした時間に、

アスカに注いだ想いに、

幸せだった二人の時間に、

ウソいつわりは一切ない。

軽い気持ちでアスカと関わったつもりもないし、最初から彼女をたぶらかそうと思って近付いたわけでもない。

しかし、その一方で、きっぱりマキと決別できない自分もいた。


“俺って……”


自分にはアスカという彼女がいる。

いま自分が置かれている立場を充分理解していたが、マキに対する恋心や愛情が再燃するのを、ヒロトは感じていた。