こわれもの


アスカの悩みや家庭環境を思い、ヒロトは言った。

「歳なんて関係ないって。

若いヤツにも悩みはいっぱいある。

それに、マキはマキ、アスカはアスカだろ」

つい、流れに乗ってアスカの名を口にしてしまった。

『ヒロトの彼女、アスカちゃんっていうんだ……』

「……まあ、とにかく。

悩みなんて人それぞれで、他人と比べたって解決するもんじゃないし、マキにはマキの人生があるんだから、ちょっと休んで、また、ゆっくり考えたらいいじゃん」

『そんな余裕、もう無いよ……!』

マキは語気強く言った。

電話の向こう。

彼女は泣いている……。


『私、もう27歳なんだよ……。

それで2回も離婚して、一人で2人の子供を育てなきゃならない……。

同い年の子はみんな、楽しそうに自由を満喫したり、会社でやりたい仕事任されてたり、望む結婚をして旦那と順調そうにやってるのに、何で私だけこんなに苦労しなきゃいけないの?

最初からシングルマザーになんて、なる気なかった。

結婚して幸せになって、旦那や子供と一緒に幸せになりたかった……!』

「マキは一人じゃないだろ?

チビ達がいる。

マキは、それが幸せじゃないの?」

『幸せだけど、足りないんだよ……。

一人じゃ、心細いんだよ……』


マキは限界だった。

これから、幼い子供を一人で育てていかなくてはならない不安や、相性の良い異性と出会えなかった今までの自分への後悔。


『……こんなこと言いたくないけど、アスカちゃんは若いからいいじゃん!

まだ、高校生でしょ?

夢だって追いかけられるし、一度や二度失恋したって、すぐに次の出会いがあるよ……!

ヒロトがいなくたって、アスカちゃんは平気だよ!』

「マキ……。そんなこと言うなよ……」