こわれもの


「マキ、俺は……」

『分かってる。

彼女いるって言いたいんでしょ?

分かってるよ……』

マキの声は、ふたたび元気を失っていく。

『私、大人になれば何もかもがうまくいくと思ってた。

子供より視野広がるし、知識もつく。

だから、完璧な母親、完璧な妻になれるに違いない、って……。


でも、現実は違う。


目の前のことに精一杯で、全然余裕がないよ。

昔はこんなんじゃなかったのに……。

年々、嫌な女になってく……』

「マキ、疲れてるんじゃない?

ちょっと、休んだら?」

これ以上マキと話していても、彼女はマイナス思考のループに陥ってしまう。

ヒロトはそう考え、電話を終わらせようとしたが、マキは後悔を多分に含んだ声でそれを遮った。

『うん。疲れてる。

最近、生きてる意味が分からない。

良いことなんて何もないし、子供と一緒に死にたいとすら思うもん……』

「マキ……!」

『ヒロトが付き合ってる今の彼女、高校生って言ってたね。

16~18歳?

若いね。うらやましい……』