ヒロトがやってきたのは、実にいいタイミングだった。
アスカがどっぷりと暗い気持ちに浸ってしまうギリギリのところで、
「待たせたな!」
気さくなヒロトが、アスカのそばにやってきた。
彼女はどんな顔をしていたのだろうか、ヒロトはアスカの顔を見るなりうろたえ、
「ごめんな!
そんな悲しそうな顔するな」
と、あわててアスカの頭をなでる。
ヒロトの手のひらのぬくもりに心がほぐされるのを感じつつ、アスカは戸惑いを含んだ声で、
「悲しんでませんよっ。
仕事、おつかれです!
今日は忙しかったですか?」
と、ヒロトの仕事ぶりを尋ねた。
ヒロトは冗談っぽくため息をつくと、
「まあ、仕事だから腹立つこともあるけど、金もらって働いてる以上しょうがないしな」
と、仕事に関して多くを語らなかった。
“ヒロトさん、やっぱり大人だなぁ……”
アスカはますます、彼に尊敬の気持ちを寄せる。


