人間の脳は不思議で、良いことより悪い出来事の方を強く記憶する。
一見、それだと精神的に負荷がかかりそうだが、つらい体験が多いほど、日常の中で小さな幸せを見逃さず大切にできるのかもしれない。
マキも、そうなのだろう。
こうしてつらかった気持ちや凄惨(せいさん)な思い出を話すことで、前を向いて生きていこうとしているのかもしれない。
『私、本当に、最低な母親だよ……。
二度も結婚に失敗するなんて……。
そんなつもりじゃなかったのに。
男を見る目、ナイのかも』
ヒロトは黙ってマキの話に耳を傾けていた。
マキがこうして自分を責めるのも、珍しいことではない。
「マキは、よく頑張ってるよ。
今まで、つらかったな……」
少しでもマキが元気になればと願い、ヒロトは言った。
「チビ達は、俺達大人と違って素直だから。
今は、チビ達が気持ちのまま泣くのは仕方ないし、それを目の当たりにしなきゃならないマキも大変だろうけど、チビ達がもっと大きくなったら、マキの愛情を幸せに思う日がくるって。
だから、そんなに落ち込むなよ。
父親や兄弟がそばにいなくて寂しいのかもしれないけど、母親がそばにいるだけで、子供は満たされるんだから」


