客の少ない静かな店内は、自然と過去の出来事を照らし出していく。
アスカは色々なことを考えた。
こうして、ヒロトを待つ自分自身が不思議で仕方ない。
彼とは、客と店員の関係でいられたらそれでよかったはずだ。
クールな外見に似合わず、ヒロトは心配りのできる優しい人だと思ってはいるが、キョウの言うように、彼と恋愛関係になることなど、アスカは期待していない。
なのに、最近別れたばかりの元カレの存在が、アスカの中から薄らいでいるのも確かで。
彼と最後に会ったのはいつだったのかすら、もう、思い出せないでいる。
“あんなに好きだったはずなのに、今では涙もこぼれない。
人の気持ちって、こんなに変わるものなんだね”
付き合った途端、相手に依存してしまう気質な反面、アスカは自分自身の冷めた思考を自覚していた。
元カレと別れた時も悲しかったけれど、交際中、「いつか別れが来る」と覚悟していた気もする。
永遠なんて、ない――――。
夜のせいだろうか。
この辺りは建物が少なく、田畑が広がるのどかな景色。
窓の外は暗く、アスカの気持ちも闇に染まるようだった。


