こわれもの


マキはヒロトに背中を向けたまま立ち止まり、

「ごめん……。

もう、会いに来たりしないから」

「ああ、そうして」

わざと冷たい口調で、ヒロトは言った。

「もう、マキに会いたくない。

マキだって、俺なんかじゃなく、他にも頼れるヤツいるだろ?

こんなとこに来てないで、子供のためにもしっかりしろよ」

離婚したばかりの女性を前に、少し、厳し過ぎる言い方だったと思う。

しかし、ヒロトはこう言う他なかった。


決して口には出せないが、アスカと付き合っていても、ヒロトはまだ、マキに未練があった。

マキと付き合っていた頃の思い出が胸をめぐり、胸が苦しくなって眠れない夜もある。

けれども、そうやっていつまでも過去を引きずるのはごめんだ。

これからは、アスカのことだけ見ていきたい。

アスカと共に、幸せになりたい。


「マキはマキでつらかったと思うけど、もう俺らは他人じゃん。

付き合ってた頃は、マキのこと全力で助けたいと思ってた。

大好きだったよ。

……でも、今はもう違う。

俺だって、幸せにしたいヤツがいるんだ。

マキだって、それを応援してくれただろ?」