こわれもの


漠然とした不安を抱えながらも、ヒロトとの付き合いは何の問題もなく続いた。

落葉樹の葉が茶色く染まり始めた10月――。

すっかり夏の景色を失った町並みが、遠ざかる思い出にシンクロするようだ。


ヒロトのことを好きな気持ちは、アスカの中で日毎大きくなっている。

彼と付き合い出してからのアスカは、急激に彼との時間を求めた。

どれだけ同じ時を過ごしても足りないほどに、ヒロトはアスカの全てとなっていた。

だからこそ、彼を失うこわさも、おそろしいほどに膨らんでいく。


ヒロトはアスカの孤独を癒し、彼女を思いやっている。

毎日、彼女に元気を与え続けてくれる。

悲しみを共有してくれる。

“ヒロちゃんを失ったら、私はどうなっちゃうんだろう?”

アスカは、ヒロトのいない日常を考えられなかった。

いや、想像すらしたくなかった。


マツリに、ヒロトと真っ正面から話し合えとアドバイスされた時、

「確かにその通りだ」

と、一度は納得したアスカ。

けれども、それを行動に移すことはできなかった。

“今のまま悩むのもつらいけど……。

ドタキャンの理由を知ったら、取り返しのつかないことになる気がする……。

そうすることで、ヒロちゃんがいなくなったら……?”

ヒロトを失うのに比べたら、こうして一人で悩む方がまだマシ。