こわれもの


待ち合わせの22時。

平日なので、カフェ店内はいたって静かだ。

窓辺のテーブルで、アスカは3杯目になるマンゴーラテを口にしていた。

バイトを上がって、この席に着き3時間経過。

飲み物1杯で時間をつぶすのは無理があった。

長居しすぎで、店員の視線も痛くなってくる。

頬杖をついて、柔らかいオレンジ色のグラスを見ていると、さきほど電話口で心配してくれた祖母の声を思い出す。

ウソをついたことに、アスカの胸は痛んだ。

“おばあちゃん、心配かけてごめんね。

ウソついて、本当にごめん……”

こんな罪悪感を抱えてまで、ヒロトに会いたいのはなぜだろう?

罪ほろぼしにはならないかもしれないが、アスカはカフェのカウンターに行き、テイクアウトできる商品を買った。

“おばあちゃん、お土産買ってくからね”

祖母が好きそうな砂糖系の甘さ全開のパンケーキを買いカバンにしまうと、アスカは元の席に戻った。