こわれもの


アスカはマツリの皮肉をスルーし、珍しく彼の言葉に食いついた。

「恋愛指南書?

ジコ、ケーハツって何?

なんかすごそう!

そんな本あるの?」

まさか話に乗ってもらえるとは思わなかったので、マツリはやや驚いている。

いつも突っぱねられているからか、アスカにかまってもらえて気分が良くなったマツリは、親切に説明しだした。

「本屋に行けば、大抵あるだろ。

『恋がうまくいく50の方法』とか『素敵な女になるためのレッスン』って感じのタイトルの本。

お前が求めてんのは、そういう系じゃないの?」

「うん! そう、そうなんだよ!」

アスカは高らかな気分で言った。

その場でただ一人、キョウだけは微妙な反応で、

「それって結局、そういう本を書いた人の経験談だよ?

読む人みんなに参考になるとは限らないじゃん」

「まあ、気分の問題だよ。

何となく経験値上がりそうな気がするし」

アスカは言った。

「ヒロちゃんに、私のこともっと好きになってもらいたいんだよね。

いつも、ヒロちゃんには助けてもらってばかりだから。

私も、ヒロちゃんに何かしてあげたいなぁって思うの」

「お前にしてはマトモな意見だな」

マツリはからかい口調でアスカをほめた。

「『お前にしては』は余分!」

アスカはそう返しつつ、前ほど神経質にマツリの言葉を受け止めないようになっていた。