多少生活が苦しくても、母と二人で仲良くやっていければ、アスカは幸せだった。
けれども、離婚から数年が経つと母はアスカの知らぬ所で男性と恋に落ち、再婚を決めた……。
「親が離婚した時、私はお母さんを支えてあげるんだって決めてたのに、その役割がちっとも果たせなかった。
それどころか、子供としてお母さんの気持ちを満たせてなかったのかもしれない。
再婚相手に、お母さんを取られたみたいに感じたよ」
しんみりとつぶやき、アスカは冷めかけのピザをかじった。
「優しいんだな、アスカは」
ヒロトは言いながら、元カノ·マキの離婚話を思い出していた。
「ううん。私、優しくなんかないよ。
むしろ、お母さんが再婚してから、私はひどいことばかり考えてた」
「ひどいこと?」
「……『おめでとう』って言いながらも、本当は私、お母さんの再婚に納得してなかった。
あの男に取られたんだって感じたし、腹も立った。
幸せになろうとしてるお母さんのこと困らせたくなかったから、いい子のフリして再婚に賛成したけど、今でも本当は寂しいんだ……」
再婚すると、母子家庭での苦労で疲れていた母の顔に、春の木漏れ日のような笑顔が蘇った。
それを見て、アスカの孤独はさらに募っていった。
粉雪のようにひんやりと。
「でも、ヒロちゃんと出会ってから、再婚をした時のお母さんの気持ちが、ちょっとだけ分かる気がした。
お母さんは、私を切り捨てたわけじゃないんだって。
私が勝手に、そう思い込んでいただけなんだよね……」
母が再婚してから積もり続けた、とかしようのない冷ややかな寂しさ。
アスカの心に潜んだそれは、ヒロトのあたたかい手に掬(すく)いあげられ、彼女の孤独感を癒すことにつながった。


