こわれもの


正直アスカは、ヒロトに出会う前まで、20歳以上の男は恋愛対象にならないと思っていた。

年上過ぎて話も合わないだろうし、生活リズムも違うに決まっている、と。

しかし、ヒロトと出会って、20代の人に対する印象が変わったのも確かで。

“20代って、もっともっと大人なんだと思ってた。

お母さんや親戚のおじさんみたいに説教ばかりしてくるものだと思ってたけど……。そうじゃなかった。

少なくとも、ヒロトさんはそうだった”

彼は、バイトに慣れず弱気なアスカに、理解を示してくれた。

“絶対、私以上に経験豊富なのに、それをひけらかさないんだよね。ヒロトさんはさ……”

考え込むアスカに、キョウは言った。

『好きかどうかは分からなくても、とりあえずご飯行くくらいはいいんじゃない?

アスカも、ホントはヒロトさんのこと気になってるみたいだし』

興味半分、友達としての応援半分といったキョウの言葉に押され、アスカはヒロトと夕食に行くことに決めた。

バイト後、彼に指定されたカフェ《ペルセウス》で待つことにした。

家でアスカの帰宅を待つ祖母には、キョウの家で勉強する、と、ウソをついて……。