こわれもの


教室から他の生徒がいなくなると、キョウは言った。

「マツリも、アスカに対して悪気はないんだって、私にも分かるよ。でも……」

「悪気なんかあるかよ。

ガキじゃあるまいし」

“充分ガキじゃん!”と心の中でツッコミつつ、キョウはさらに言葉を継いだ。

「アドバイスに悪気がナイんだったら、もっと前向きにアスカのこと応援してあげようよ」

「それは無理」

「なんで?

……前から、もしかしてって思ってたけど、マツリってアスカのこと好き?

だからいつも、ヒロトさんのこと悪く言うの?」

戸惑いつつもストレートな質問をするキョウに、マツリは平然と言い切った。

「好きなヤツの恋愛邪魔するほど、俺は腐ってねーよ」

「じゃあ、なんで?」

「ヒロトってヤツ、おかしくない?」

「そうかな? ヒロトさんって優しそうだよ。

会ったことないけど、アスカの話聞いてたら、いい人って感じだし」

「ホントにヒロトがアスカのことを好きだっていうんなら、あの二人、今頃付き合ってたっていいはずじゃん。

なのにヒロトは、アイツに期待させるような態度見せるだけで、煮え切らない態度で通してる。

よほど鈍感なヤツじゃなきゃ、ヒロトだって、もうとっくにアイツの気持ちには気付いてるだろうし。

なのに、進展させる気もない。

かといって、突き放そうともしない。

……そういうヤツ、気に入らねえから。


キョウも、本当のトコ、どう思ってんだよ」

マツリは言い、自分の席に置いてあったカバンを引っつかむと、キョウの返事を待たずに教室を出ていった。