こわれもの


キョウは今、クラスのみんなとカラオケに居るらしかった。

騒がしい部屋から抜け、比較的静かな通路に移動し、彼女はアスカの電話に出る。

「……っていうワケなんだけど」

アスカは、かいつまんで事情を話した。

「ヒロトさんのことはいい人だと思うけど、バイトの外で会うほど仲良いって感じでもなかったし……。

いきなり誘ってきた理由も分かんないし、帰り遅くなったらおばあちゃんに心配かけるし……」

バイトを始めたことはもちろん、普段から、アスカはキョウにヒロトの話もしていた。

最近アスカは、バイトとは関係のない学校に居る時でも、一日一度は必ずヒロトのことを思い出している。


『えー! すごい!

向こうから誘われたの?

スゴイじゃん!

前から思ってたけど、ヒロトさんって絶対アスカのこと好きだよー!』

キョウに思わぬことを言われ、アスカの心臓は派手に飛び跳ねた。

「そんなわけないじゃん!

ヒロトさんは大人だよ?」

『大人っていっても、ヒロトさんまだ20代前半だよねー?

大丈夫だって!』

「こっちがよくても、ヒロトさんから見たら私なんて女じゃないよ」

この間、アスカはさりげなくヒロトから彼の年齢を聞き出した。

ヒロトは22歳。
アスカは17……。

“明らかに、私は子供扱いされてると思うけど……”

テンション高いキョウの発言を前に、アスカはますます冷静になってしまう。