僕は止めることも出来ずに、キョウがエレノアの前まで行くのをただ固唾を飲んで見つめる。


キョウがエレノアの目の前に立つと、エレノアがゆっくりと顔を上げて口を開いた。



「ふふ、イイコ。まずはマークの短剣を出して頂戴」

「短剣を?」

「そうよ。あの短剣が貴方達の魔力を抑えているの」

「……」


そう言われて、キョウは懐から素直に短剣を取り出した。
無言で手を伸ばすエレノアに、短剣を渡す。



「流石、マークね。これがあるお陰で貴方達の魔力は誰にも悟られない。
私達みたいな魔導士以外。無闇に恐れられる事はないのよ。
……知ってるかしら?」


ふわりと短剣がエレノアの手の中で宙に浮いた。
宙に漂わせながら、エレノアは続ける。



「……双子は底知れぬ魔力を持っているの。
それは大地に恵みをもたらし、崇められたわ。
でも、その魔力は段々と畏怖する対象となっていく。
この魔力は人々を癒す力を持ってるけど、逆を言えば滅ぼす力も持ち合わせているのよ」



手の上を泳いでいた短剣が、ぼんやりと光を放つ。
その光は段々と強さを増していった。