奇跡事【完結】



この人がエレノアなのか。

何だろうか。この人の空気なのだろうか。
呼吸することすら忘れそうだ。


カタラは全く気にせず、エレノアに近寄っていく。


何故か、僕の足は前に出てくれない。
エレノアに近付こうと思うのに、動けない。



「ルーイ」


突然、エレノアが僕の名前を呼ぶ。
その声にハッとした。


……聞いたことある声。



名前なんて告げてないのに、僕の名前を知ってる事に不信感を露わにするのはカタラだ。
低い声を出すとエレノアに訊く。



「俺達を知ってるのか」

「ええ、知ってるわ。キョウに、サーシャに、カタラでしょう」



一人一人、指差しながらエレノアがそう口にする。
サーシャは僕の腕を掴む手に力を込めた。



「貴方達を待ってたわ」

「……俺達を?」

「そうよ。ふふ、変わらないわ」

「誰が、だ?」


ローブの奥から、エレノアの瞳が見える。
暗く、鋭い瞳が確かに僕を捉えていた。


それから、スッと視線を隣に移す。
……キョウを見てる?