奇跡事【完結】



――――――――――ルーイ。




またも、あの声。


それは前に聞いた時よりも、ハッキリとクリアに聞こえる。


誰?そう、返事をしようにも声が出てくれない。




――――――――――私に会いに来てくれるの?



ニヤリと誰かが微笑んだような気がした。
僕はハッとして目を開ける。


すると、目の前には心配そうな顔をしたサーシャがいた。



「……サー、シャ」


僕は体を起き上がらせると、頭に手をあてる。
少しだけズキっと痛んだ。



「大丈夫?うなされてたようだったから」

「……うん、大丈夫。ごめん。って、もう朝」


辺りが既に明るくなってる事に気付く。
まだ完璧に陽が昇ったわけではないけど。


「……キョウもあんま眠れなかったみたいなんだ」

「そっか」

「ルーイ、行けるか?」


カタラがそう尋ねてくるから、僕は静かに頷いた。