「ルーイ、それ以上言ったら殴るよ?」
「えっ」
ニコニコしてるサーシャの口から飛び出た言葉に、僕は耳を疑う。
ぐっと握り拳を作りながら、サーシャはこっちを見ていた。
「そんな事、私だって思ってるんだよ。きっと、キョウだって。
……それに、私とキョウはちゃんと鍛えているのに救えなかったんだよ?」
「それは僕が…」
「それは違う。だって、鍛えてたとしても私達はアイツに勝てなかったかもしれないから」
「……」
「考えてもみなよ。マークおじさんは有名な魔導士だったんだよ?
私達と比べ物にならないぐらい強かったはず。
その、マークおじさんが殺されたんだよ。
……あの、湖で見た男は怪我なんてしてなかったし」
確かに僕とキョウがサーティスの元へ行った時、怪我をしていなかった。
だけど。
もしかしたら、あの男は怪我をしたのかもしれない。
キョウの短剣が刺した傷痕がすぐに消えた様に、他の傷も消えてしまったのかもしれない。
ほんの数分で。
それを見ていなかったから、サーシャはそう言ってるんだ。
あたかも、あの男が“無傷”で戦ったかの様に。



