シンっとなった広い室内で、僕は小さく息を吐く。
それから、ゆっくりとエレノアの座っていた台座に腰を下ろす。



“彼女は真っ白でもあって、真っ黒でもあるんだ”



さっぱり意味なんてわからなかったけど、今ならわかる。

エレノアの恵みとして、与えていた奇跡や潤いはエレノアの白い部分。
そして、自分を裏切った全てを憎み、命を奪い続けたのはエレノアの黒い部分。


話す事は全てが黒く聞こえて、人を惑わしてしまうけど。


エレノアが神殿から出なかったのは、サーティスに狙われない為じゃない。


恵みとして、力を与え続ける為だ。



きっと、エレノアの力が消えたら外に生っている木の実も全て枯れ果ててしまうのだろう。



ねえ。僕の母親は。
本当はどっちだったのだろう。


全てを知った上で、僕だけが信じてもいいだろうか。



可愛い私の息子。
その言葉を。