奇跡事【完結】



「ルイードの姿を、それ以降誰も見てないらしいからな。
エレノアも語らなかったし、生きてるなら姿を見せる筈だ。
だから、死んだ。そう人々は代々伝えてきた」

「……そうなんだ」

「俺が生まれる前の事だし、伝承として語り継がれてる内容を話してるだけだ」

「それでも、私達はそんな事一切知らなかった」

「やっぱり、隠してたのか」



サーシャにキョウは顔を俯かせると、そうぼそっと呟いた。



知らない、聞かされていない。
僕達は予想以上に、何も知らない。


現状の世界の事とか、何も。



ケーラ村の人達は、教えてなんてくれなかった。


僕達が聞かなかったんじゃない。
知らなかったから、聞けなかった。

そんな事があるだなんて、夢にも思ってなかったんだ。



「カタラはこれからどうするの?」


キョウがカタラにそう尋ねる。
カタラは腕を組むと難しい顔を見せた。