奇跡事【完結】



「……結婚を申し込もうと思っている」

「けっこ、ん?」

「ああ」

「サーシャにか?」


それにトライシオンはゆっくりと頷いた。



「サーシャと出会った時、僕は衝撃を受けたよ。
あのサーシャと瓜二つだったんだから。
だけど、僕よりずっと若い。だから別人だって思っていた。でも、サーシャはあのサーシャに中身までそっくりだろ?」

「……」

「生まれ変わりなのかって思ったんだ。
それならもう、サーシャを手放したくないと思ってね」

「……」

「兄さんはまだサーシャを、好きかい?」

「……俺は」


ハッキリ好きじゃない。そう告げればいいのに。
それは言葉にならず、俺は口を噤む。


「どっちでもいいんだ。僕のこの気持ちは変わらない」

「……いや、トライシオンならきっとサーシャを幸せにしてくれる」



きっと、俺以上に。
俺はうまく笑えていただろうか。


トライシオンの話は終わったらしく、帰ろうとした時だった。



「そう、それはそれは素敵なお話ね」


ハッとして振り返り、俺はそいつを睨みつける。
……そこに立っていたのはエレノアだ。