奇跡事【完結】


森の中を二人で並びながら、話をする。



「サーティスはいつからここに住んでるの?」

「いつだったか。覚えていない」

「ここって誰も来ないでしょ?何でこんな場所にいるんだろうって思ってさ」

「一人の方が気楽だからだ」

「そっか。ならいつ来てもサーティスはここにいるって事?」

「……ああ、大体は」

「そうなんだ。じゃあまた来てもいい?」

「……ああ」

「やった」



サーシャは胸の前で小さく拳を作ると、嬉しそうにはにかんだ。
昔に戻った感覚がして、クラクラと眩暈を起こしそうになる。


ここにいるサーシャは、サーシャであって、サーシャでないのに。


それから、俺達はたくさんの話をした。
今サーシャが住んでいる場所は長閑でいいとこだとか。
サーシャの好きな食べ物の話とか。

俺はそれに相槌を打つだけだったけど、時間が過ぎるのはとても早く感じた。


辺りが薄らと赤く染まり始めた頃。


「わっ、もう暗くなりそう!まずい。トライシオンに怒られちゃう!」


そう言ったから、俺は耳を疑った。
トライシオン、だと?