奇跡事【完結】


ゆっくりとズマーニャがその場に倒れ込む。
咄嗟に受け止めた俺は、ズマーニャの後ろに立つ人物にやっと気付いた。


「……エレノア!!」

「ふふ、ちゃんと殺せたようね。
どう?妹を二回も殺す感覚は」

「ふざけるな!何故、何故ズマーニャを刺した!!」

「エレ…ノア、さ、ま」


か細い声でズマーニャがそう呟く。
ズマーニャはエレノアを崇拝していた。
そんなズマーニャを何故殺すんだ。


「知り過ぎてしまったからよ」

「……何?」

「私に忠誠を誓うのに一点の曇りもあってはダメなの。
そのシミは急速に成長してしまうからね」

「それでも、ズマーニャならお前を裏切るような事はしなかった筈だ!」

「何故、そう言い切れるの?」

「何故って」

「……、俺は、エレノア様を裏切ったりなど…」



俺の肩に手をかけ、力を込めるとズマーニャはエレノアの方を向いた。
エレノアは恐ろしい程に冷たい瞳でズマーニャを見ている。

妖しく煌めく赤い口元が歪んだ。