奇跡事【完結】



「サーシャ、中へ。エレノア様がお待ちだ」

「はい」


ズマーニャに背中を押され、一歩進んだサーシャ。
だけど、俺達が気になるのか不安そうに振り返りこちらを見た。



「……心配するな。サーシャは早くエレノア様の元へ」

「わかりました」


踵を返すと、真っ直ぐに神殿の中へと入っていく。
サーシャがこちらを振り返る事はもうなかった。


対峙する俺とズマーニャ。
ズマーニャは鋭い瞳で俺を睨みつけている。

それから冷たく低い声で尋ねてきた。


「……何の用だ」


ズマーニャはパチフィスタには目もくれない。
だから、それに答えるように俺も見つめ返した。


「どうして、サーシャがここに来ているんだ」

「それに答える必要あるか」

「……サーシャは俺の妹だ。必要あるだろ」

「妹?」


ズマーニャの眉がピクリと動く。訝しげな表情のまま、小さく反芻した。
確認するように俺もハッキリと口にする。


「俺の妹だ」

「……」


暫く、沈黙が俺達を包んだ。
最初にそれを破ったのはズマーニャだった。



「妹、か。……にわかに信じ難いな。
サーシャは俺が拾ったんだ」

「なんだと?」


ズマーニャの言葉に俺を目を見張った。
拾っただと?ズマーニャがか?