奇跡事【完結】




「ねえ!カタラ!」


そう呼び止めると、カタラはピタリと足を止める。
それからゆっくりと顔だけこちらに向けた。


「僕達の村に何か用があるの?」

「……僕達の村?」



カタラは小さく僕の言葉を反芻すると、難しい顔をしながら腕を組んだ。


「……お前達は、ケーラ村の住人か?」

「……うん、そうだけど」


ケーラ村。
それが僕達の村の名前。


村から出る事もないから、その名前を口にする事はほとんどなかったけど。


「……そうか。でも、用があるのはお前達じゃない」


それだけ言うと、また体をケーラ村に向けて歩みを進めて行く。
他の人に用事があるらしい。

だけど。

もう、僕達の村は。



「カタラさん。無くなったよ。俺達の村は」


言葉を詰まらせた僕の代わりに、キョウがそう言った。