奇跡事【完結】



僕達は手を繋いだまま寝てしまったらしく、朝を迎えた。


「……オイ」


薄らと聞こえる、その声に僕は瞼を開ける。
ぺちぺちと頬を叩かれているのだけ感じた。


「……ん」


目を擦って、その人を見るとそこにいたのは見た事もない男だった。


「わあっ!」


驚きの声を上げて、後ろに下がりながら短剣を手にする。
僕の声でサーシャとキョウも目を覚ましたらしく、ゆっくり起き上がると目の前の男に気付いて声を上げた。


「誰だ!?」
「誰!?ルーイ!」



僕はその男に短剣を向ける。
だけど、男は一切表情を変えずに僕を見つめた。


片方の顔を布で覆っているその男。
コパルトブルーの左目。
少しだけ焼けた肌。


肌を出すのが嫌なのか、男は顔の半分以外を全て布で覆っていた。



「俺の名はカタラ。……死んでるのかと思ったから声をかけた」



そう言うと、カタラはスクっと立ち上がり踵を返す。
向かおうとしてる先。

それは僕達の村があった場所だった。