奇跡事【完結】



「……何で、何で、サーシャ」


俺が、殺した。
俺が手にかけたんだ。


スウッと俺の頬を一筋の涙が伝った。
父親を失った時以来、涙なんて流してなかった。

もう、流さないモノだと思っていた。


どうしたってこうも別れる事は辛いんだ。
胸が苦しい。苦しくて堪らない。



「貴方と出会ったからサーシャは死んだのよ」

「っ!エレノア!!お前は」



エレノアはいつの間にか背後に立っていた。
涼しい顔でサーシャと俺を見下ろす。


「貴方は私の呪いを受けた筈なのに、あの娘と出会いそして禁忌を犯したわ。
これ程まで侮辱されたのは初めてよ。サーティス。
貴方が私のモノにならないなら絶望を与えると私は言ったわ」

「……それが、サーシャが死ぬって事か」

「サーシャが死ぬ?そんな甘いモノじゃないわ」

「何?」


サーシャの体に食い込んだ剣が、ゆっくりと体から抜けて浮かんでいく。
その剣はエレノアの手の中へと収まった。

そして、エレノアはふふっとおかしそうに微笑んだ。