奇跡事【完結】


「さ、しゃ、嫌だ、サーシャ」

「……、さーてぃ、す」


途切れ途切れにサーシャが言葉を紡ぐ。
血が溢れて止まらない。


段々と虚ろになっていくその瞳。


死んで欲しくなんかないのに。
サーシャ、お前にだけは生きていて欲しいのに。


「し、ぬな」

「……なん、で」

「……っ」


俺は首を振る事しか出来ず、命の灯火が消えかけたサーシャに言葉をかけられずにいた。


「サーシャ、さ……」


パタリと力なく落ちた手。

あまりにも呆気なく息絶えたサーシャ。
……しかも、俺の手によって。



動かない身体。
もう一切交わることのない視線。

段々と赤黒くなっていく血。