「私ね、サーティスの事好きだと思う」

「……」

「ううん、好き。もっとサーティスを知りたいし、サーティスと一緒にいたいって思ってる」

「……サーシャ」


ぽつりとサーシャの名前を呟く。
サーシャは目を細めてから、少しだけ顔を曇らせた。


その表情が今の言葉と噛み合わなくて、俺は口を噤む。


「サーティスってどこか、線を引いていてるんだよね」

「線?」

「うん。サーティスは私に色々教えてくれてるけど、それでもサーティスの事を全く理解出来てない気がするんだ」

「……」

「自分の事を話しているけど話していない気がしてさ。あはは、おかしいね」


それにどんな反応をしたらいいのかわからなかった。
大して意識した事なかったけど、サーシャはそう思っていたのか。


でも、俺は妹がいる事実を伝えただけで他の事を話しした事がなかった。
必要ないと思ったからだ。


エレノアを大事に思っているサーシャにわざわざエレノアの本性を伝える必要がない
それに、俺に強大な魔力がある事も教えるつもりはなかった。


それを言った事で、サーシャが危険な目に遭う方が辛いからだ。
俺はこの笑顔を守りたい。

だからこそ、言わなかった。
それだけで他意はない。