「……」


一瞬。
エレノアは何が起こったのか、わからない様だった。


どうして殺せなかったのか。
今のは何だったのか。


だけど、すぐに俺を見つめる。


「……ふふ、くく、ははっ、もしかして今のは貴方がしたのかしら?
素敵。益々貴方を殺すのが惜しくなったわ。貴方が欲しい、欲しくて堪らないわ」

「……」

「サーティス。そうね、貴方の名前はサーティス。
それがいいわ。こっちは……」


そう言うと、エレノアは俺の片割れを抱き上げる。
さっきまで涙を流していたそいつは黙ってエレノアを見つめていた。


「……ふふ、…………ね」



最後まで話す前に、エレノアはその場から消え去っていた。
だから、片割れの名前を俺は聞けなかったんだ。