奇跡事【完結】


「“渡したい人でもいるの?そう、それじゃあその女の子に教えてあげなさい”って、まるで俺の心の中を読んだ様にその人が言った」



……それから。


キョウは顔を俯かせると、ぽつりと呟く。



「“クサイチゴの花言葉は幸福な家庭なのよ”って」

「……」

「でね、ありがとうって告げたらその人は微かに微笑んで……、俺の目の前から泡が弾けた様に一瞬で消えたんだ。
そう、さっきみたいに」

「……それって」

「いや、さっきのサーティスと名乗った男ではない。
声も見た目も全く違ってた」



それじゃあ、サーティスみたいに幻術を使える人ってのは他にもいるって事?

もしかしたら、それが他の国では当たり前で。
僕達の村人だけが、いや、もしかしたら僕達だけが知らなかった事なのかもしれない。



「ねえ」


その時、ずっと口を結んでいたサーシャが話し出した。
僕とキョウは黙ったまま、サーシャの言葉を待つ。