奇跡事【完結】



僕は膝から崩れ落ち、地面に拳を何度も叩き付けた。
ぽたぽたと零れおちる涙は跡になる。

それでも、止まる事なんてない。


サーシャがいなくなって、キョウまでいなくなるなんて。
マークおじさんがいなくなって、二人だけはずっと側にいると思ってた。


震える身体。
近くにはもう二度と動かないサーシャの姿。


何度も拳を打ちつけていた反動からか、胸元に忍ばせていた短剣がからりと音を立てて落ちた。
マークおじさんが魔力を込めたと言っていた短剣。


星が重なったように見えるその紋章が、淡く光っていた。

……こんな短剣。
持ってたって意味がないんだ。


力が欲しい。
キョウを、取り戻す力が。


その短剣を手に取ると、僕は思いっ切り自分の左手に突き刺した。
肉が裂ける音がした。
それと一緒に痛みも感じた。


だけど、それ以上に自分の無力さが憎い。


血が溢れ、滲み出てくる。
真っ赤な血。


今まで何度も強くなりたい。
そう、思ったけど。


……今以上に感じていなかった。


瞬間、何かがパチンと弾けた様な気がした。
それと一緒に感じる魔力。