奇跡事【完結】



暫く、誰も口を開かなかった。


いや、言葉を発する事が出来なかったのかもしれない。




「……な、に」



漸く、そう口にしたのはサーシャだった。



「……今の、何。さっきの、何?人が消えたよ?」


僕だって、きっとキョウだって初めて見た筈だ。


幻術の様に、サーティスは一瞬でこの場から消え去った。
いつしか、聞いた事はあった。


手から炎を出したり、水を生み出したり、木々を操ったり。
そして、一瞬でどこかに移動したり。


それは全て空想のお伽噺だと思っていた。



まさか、現実にあるとは思わないじゃないか。



「俺は、一度見た事がある」

「え?」
「え?」


僕が支えていた体を起き上がらせると、キョウはそうぽつりと漏らす。
キョウの言葉に僕とサーシャの声が被った。